歴史的建築物セミナーについて

歴史的建築物セミナーについて

歴史的建築物セミナーは、兵庫県内に現存する貴重な歴史的建築物にスポットをあて、その建物のできた背景や建築的価値だけでなく、どのように所有者や地域の方に愛されてきたかを検証していくことで、時代の変化に合わせて、どのように保存再生をしていくことがよいかを、私たち専門家だけでなく、多くの方とともに考えていこうとする事業です。

第5回ひょうご歴史的建築物セミナー 小原豊雲と小原流の建築群

イベント名称 第5回ひょうご歴史的建築物セミナー 小原豊雲と小原流の建築群 ー小原豊雲と清家清の世界ー
開催日時 2017年11月11日(土)14:00〜16:00(開場13:30)
募集期間(締切日) 〜2017年11月7日(火)
講師 海野 弘・笠原一人
内容 少年時代を神戸で過ごし、神戸二中で学んだ建築家・清家清は来年生誕100周年を迎えます。小原流三世家元・小原豊雲の理想を叶えるため御影の地に築いた建築群は、2016年度DOCOMOMO Japan「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」に選定されました。小原豊雲と清家清、二人の奇才によってこの世界が生まれた経緯を、今一度、読み解きます。
参加対象 一般、学生、JIA会員
定員 50名(申込先着順)
参加費 一般・JIA会員 1,000円 / 学生500円
申し込み方法 Eメール、FAXまたは電話(火・木のみ)にて、「小原流セミナー参加希望」と明記の上、お名前、所属(会社・学校等)、CPD単位希望の方でJIA正会員の方は建築士番号、建築士会会員の方はCPD番号をご記入ください。
会場 神戸市立御影公会堂 2階和室
住所 神戸市東灘区御影石町4−4−1
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主催・共催等 主催:(公社)日本建築家協会近畿支部兵庫地域会/NPO法人ひょうごヘリテージ機構H20神戸 後援:DOCOMOMO Japan(モダン・ムーブメントにかかわる建物と環境形成の記録調査および保存のための国際組織・日本支部)
CPD単位 2.0単位
お問い合わせ先 JIA兵庫地域会事務局 TEL 078-291-5548(火・木のみ)FAX:078-241-8850 e-mail jia-hyogo@h9.dion.ne.jp
当日の様子  これまで多くの歴史的建築物が失われてきたのは、あるとき使われなくなって、話題に上らなくなったのち、いつの間にか消えていたというケースが多いのではないでしょうか。その過程で所有者には様々な事情や葛藤、変化があったはずです。そんな歴史的建築物に対して、所有者でない私たちができることは、折に触れて思い浮かべ、話題にすること。まずはそれが大切なのでしょう。今回は、神戸・御影の風景を長年に渡って印象深くしている、「いけばな小原流」の建築群について知る、というセミナーを開催することになりました。
 歴史的建築物と呼ぶにはまだ新しいと感じられるかもしれない小原流の建築群ですが、最初に建てられた家元会館が1962年の竣工なので、竣工後50年を超えて文化財の資格を満たしていると言えます。しばらく前から閉館しており一般の方の目に触れる機会が失われているものの、すでに神戸の歴史的な建築物になっていると言っても過言ではないでしょう。
 そしてこの、神戸ではよく知られた高級住宅街に、お屋敷が並ぶ中、山に埋まったような特異な形で建つ建築群は、CMなどで一般にもよく知られた建築家・清家清の作品として知られていますが、他の作品とは一味違う作風は、それを建てさせた芸術家・小原豊雲の影響を抜きにしては考えられません。
 そこで、セミナーは、前半は小原豊雲について、2010年にその伝記を出版された海野弘氏に、後半は清家清について、建築史家の笠原一人氏に、それぞれお話いただくという、一風変わった構成となりました。少し焦点が定まらないかもしれず、参加人数を心配しましたが、幸い会場はほぼ埋まり、集中して耳を傾けてくださった聴衆の皆さんのおかげで、異なった方向から照らす光の中に普段は見えない建築物の姿がほのかに浮かび上がってくるような、和やかな雰囲気の会になりました。
 セミナーでは様々なキーワードが語られましたが、印象的だったのは、講師のお二人ともが口にした「建築は時代が作らせるもの、時代を記憶するもの」という言葉でした。つまり、その時代の記憶は建築物に刻まれて今日に伝わっている。歴史的建築物の意味、繋げていくことの大切さ、を改めて感じた言葉でした。
 他にも、小原豊雲について、女性の社会進出との関係、デパートの興隆、モダンアート、モダンシティ大阪、宝塚、文化のパトロン、などのキーワードが語られたあとに、清家の作品だけでなく同時代の建築家の作品が合わせて紹介されたことで、清家のユニークなアプローチが際立ち、非常に幸せな形で結実したのが、この建築群であることが分かってきました。
 今回は都合で、通常のセミナーでは行なっている見学会が開催できませんでしたが、もし機会があれば見学会を通して、その幸せな建築の姿を再確認できればと願っています。
 その時には、具体的なデザインにも踏み込んだセミナー〜御影石の石垣が作る地域性、流派と建築デザインの関係、etc.〜が、もう一度開催できるのではないかと思います。

津枝勝見(NPO ひょうごヘリテージ機構H2O神戸)